2006年 05月 27日
『国家の品格』 藤原正彦 新潮新書 |
ここ数ヶ月間売り上げの首位を独走しつづけている話題の本である。
いわゆるベストセラーを読むようになったのは実はこのブログを初めてからなのだが、正直なところ時間の無駄だったと感じることも多かった。しかし「国家の品格」はいい意味で予想を裏切る本だった。
書名とマスコミでの反響から、現代の情勢にあわせて国粋主義的な志向を鼓舞する本であることは想像できた。私は例えば現代的な和魂洋才などを説いた本なのではないかと考えていたのだが、実際に読んでみると藤原正彦は更に一歩踏み込んでいた。
合理主義的な考え、民主主義、自由と平等。これらを皆疑ってかかれと著者は言う。
合理的な思考ですべてが解決するという信仰、民主主義という思想と政治形態、人間には自由と平等が保障されるべきだという幻想。これらはすべて近代西欧が自分たちのために作ったイデオロギーや方法に過ぎない。という、考えてみれば当たり前のことを著者は説く。
こういう主張を今行うのは難しい。それほどに西欧近代思想の呪縛は強いのだ。以前からほぼ同様の主張をしている評論家の呉智英(くれともふさ)は、かつては(今でも?)「特異な評論家」と紹介されている。
その上で著者は主張する。
日本人が日本人らしくあることが日本とっても国際社会にとっても良いことである。と。
この言葉はなかなかに説得力があり、この本が売れている理由もうなずけるのだ。
この本は、民族主義への回帰志向という今日本で顕在的潜在的にすすんでいる流れ、あるいは香山リカのいう「プチ・ナショナリズム」の中に位置づけられる本と言えるだろう。
しかし、売れる理由の大きな部分が藤原正彦個人の資質によっているとも言える。優しい語り口、柔和な顔、そして数学という世間的にはもっとも合理的と思われている学問。同じ主張をしていても、誰が言っているかで印象は大きく変わるのだ。
この本が売れているという現状を私は素直に受け止めたい。
いわゆるベストセラーを読むようになったのは実はこのブログを初めてからなのだが、正直なところ時間の無駄だったと感じることも多かった。しかし「国家の品格」はいい意味で予想を裏切る本だった。
書名とマスコミでの反響から、現代の情勢にあわせて国粋主義的な志向を鼓舞する本であることは想像できた。私は例えば現代的な和魂洋才などを説いた本なのではないかと考えていたのだが、実際に読んでみると藤原正彦は更に一歩踏み込んでいた。
合理主義的な考え、民主主義、自由と平等。これらを皆疑ってかかれと著者は言う。
合理的な思考ですべてが解決するという信仰、民主主義という思想と政治形態、人間には自由と平等が保障されるべきだという幻想。これらはすべて近代西欧が自分たちのために作ったイデオロギーや方法に過ぎない。という、考えてみれば当たり前のことを著者は説く。
こういう主張を今行うのは難しい。それほどに西欧近代思想の呪縛は強いのだ。以前からほぼ同様の主張をしている評論家の呉智英(くれともふさ)は、かつては(今でも?)「特異な評論家」と紹介されている。
その上で著者は主張する。
日本人が日本人らしくあることが日本とっても国際社会にとっても良いことである。と。
この言葉はなかなかに説得力があり、この本が売れている理由もうなずけるのだ。
この本は、民族主義への回帰志向という今日本で顕在的潜在的にすすんでいる流れ、あるいは香山リカのいう「プチ・ナショナリズム」の中に位置づけられる本と言えるだろう。
しかし、売れる理由の大きな部分が藤原正彦個人の資質によっているとも言える。優しい語り口、柔和な顔、そして数学という世間的にはもっとも合理的と思われている学問。同じ主張をしていても、誰が言っているかで印象は大きく変わるのだ。
この本が売れているという現状を私は素直に受け止めたい。
by mec666cem
| 2006-05-27 22:13