2006年 04月 28日
『ご臨終メディア』 森達也×森巣博 集英社新書 |
この奇妙な書名の本は、葬儀屋さんの広告をめぐる裏話を紹介した書、ではなくて現在のマスコミを批判した本である。
森達也;ドキュメンタリー作家。代表作はオウム真理教信者の姿を描いた映画 「A」 「A2」。
森巣博;オーストラリア在住の小説家。ジャンル横断的な異色作家で代表作は「越境者たち」「非国民」。
(以上著者経歴を要約) 「マスコミの報道には独自性がない。政治や一部の団体の圧力に屈してしまう。感情に流されすぎである。
批判する能力がない。左翼・右翼の軸がずれている。大手マスコミの社員の給料が高すぎる。」
二人の対話は、森巣が上記のような紋切り型の意見をまくし立て、年下の森がそれを受けていくという流れですすんでいく。
森は、森巣の意見に同調しつつも唯一点について意見が食い違う。森は言う。
「マスコミが商売である以上、「民意」に反する報道はなされないはずだ」 と
森のこの意見は現在の日常では確かに正しいが、森巣にはおそらく楽観論と写るのだろう。
二人のやり取りは面白い部分も多く、現代マスコミ批判として部分的には評価できる部分も多い。マスコミ論やメディアリテラシーに関して考える「きっかけ」を作る本として薦めて良い本だと思う。
しかし私に言わせると、二人とも同じ楽観論の中にいる。
それは、ものごとを良く見て、良く考えて、自分の考えで判断を下せば、森や森巣と同じ考えに行き着くだろうという楽観論である。
二人の考えは、左派系リベラル派進歩的知識人といっていいだろう(森巣は「左」といわれることに納得ができないだろうが)。
正しい判断をすれば自分達と同じ考えに行き着くはずだ、という“横暴な楽観論”が本書を支配している。
そういう観点から考えると、二人のマスコミ批判が有効なのは、単にマスコミの中では彼らが「傍流」だから、というだけなのではないかという見方も出来るのだ。
森達也;ドキュメンタリー作家。代表作はオウム真理教信者の姿を描いた映画 「A」 「A2」。
森巣博;オーストラリア在住の小説家。ジャンル横断的な異色作家で代表作は「越境者たち」「非国民」。
(以上著者経歴を要約)
批判する能力がない。左翼・右翼の軸がずれている。大手マスコミの社員の給料が高すぎる。」
二人の対話は、森巣が上記のような紋切り型の意見をまくし立て、年下の森がそれを受けていくという流れですすんでいく。
森は、森巣の意見に同調しつつも唯一点について意見が食い違う。森は言う。
「マスコミが商売である以上、「民意」に反する報道はなされないはずだ」 と
森のこの意見は現在の日常では確かに正しいが、森巣にはおそらく楽観論と写るのだろう。
二人のやり取りは面白い部分も多く、現代マスコミ批判として部分的には評価できる部分も多い。マスコミ論やメディアリテラシーに関して考える「きっかけ」を作る本として薦めて良い本だと思う。
しかし私に言わせると、二人とも同じ楽観論の中にいる。
それは、ものごとを良く見て、良く考えて、自分の考えで判断を下せば、森や森巣と同じ考えに行き着くだろうという楽観論である。
二人の考えは、左派系リベラル派進歩的知識人といっていいだろう(森巣は「左」といわれることに納得ができないだろうが)。
正しい判断をすれば自分達と同じ考えに行き着くはずだ、という“横暴な楽観論”が本書を支配している。
そういう観点から考えると、二人のマスコミ批判が有効なのは、単にマスコミの中では彼らが「傍流」だから、というだけなのではないかという見方も出来るのだ。
by mec666cem
| 2006-04-28 20:39
| 読書